カメラの歴史には、「その一台が登場する前と後で業界が変わった」という瞬間がいくつかある。

2020年のCanon EOS R5はその一つだった。45MPフルサイズセンサー、8K動画、シングルボディで動画と写真の両方をプロレベルで扱えるカメラ——それは多くのフォトグラファーの「夢の一台」だったが、同時に「8K動画撮影中の過熱問題」というスキャンダルも抱えていた。

そして2024年8月。Canon EOS R5 Mark IIが登場した。

積層型CMOSセンサーへの刷新。読み出し速度40%向上によるローリングシャッター大幅改善。視線入力AF(Dual Pixel Intelligent AF)。シャッターを押す前の瞬間を記録するプリ連写——それだけでも十分だろうが、過熱問題も部分的に解決された。

プロカメラマンたちは言った。「EOS R3と同等かそれ以上の合焦速度」と。PetaPixelのフラッグシップ比較では、Sony α7R V・Nikon Z8を抑えて1位に輝いた。

初代R5を使い続けたフォトグラファーがアップグレードに踏み切った理由、そして新たにこのカメラを選ぼうとしているあなたに、R5 Mark IIの真の実力をお伝えします。


【結論】Canon EOS R5 Mark IIはこんな人におすすめ

  • 野鳥・野生動物を追うフォトグラファー(視線入力×被写体検出×30fpsの組み合わせ)
  • スポーツ・航空機の決定的瞬間を逃したくない人(プリ連写でシャッター前を遡及記録)
  • ウェディング・イベントフォトグラファー(登録人物優先AFが式場で革命的)
  • 写真と動画の両方を仕事にしているハイブリッドクリエイター(45MP×8K60p)
  • 初代EOS R5の過熱問題に不満を持っていたユーザー(大幅改善)
価格.com総合評価:4.37/5.0(47件)

Canon EOS R5 Mark IIの基本スペック

項目仕様
センサーフルサイズ裏面照射型積層CMOS
有効画素数約4,500万画素
ISO感度常用ISO 100〜51,200(拡張:ISO 50〜102,400)
AF測距点最大1,053点(測光:6,144分割)
連写速度電子シャッター最高30コマ/秒(メカシャッター最高12コマ/秒)
動画最高解像度8K DCI 59.94p RAW内部収録
プリ連写シャッター前最大15コマを遡及記録
視線入力AFDual Pixel Intelligent AF(DPAF II)
手ぶれ補正最大8.5段(ボディ内+レンズ連動)
EVF約576万ドット 0.5型OLED
モニター3.2型バリアングルタッチパネル
バッテリーLP-E6P(約340〜630枚)
重量(撮影時)約746g(バッテリー・カード込み)
サイズ138.5×101.2×93.5mm
メモリーカードCFexpress Type B / SD(UHS-II)デュアルスロット
価格(メーカー想定)654,500円(税込)
実売価格約506,977円前後(2026年4月時点)
発売日2024年8月30日

このカメラが生まれた理由——初代R5の夢と課題

初代EOS R5(2020年)は、Canonにとって一種の「賭け」だった。

45MPセンサーと8K動画——写真家と映像クリエイターの両方に「これ一台でいい」と思わせるカメラを作る。その野心はカメラ業界全体を揺るがしたが、同時に大きな代償を払った。8K動画撮影中の本体過熱問題だ。高温下では動画録画が強制停止し、プロの現場で使い物にならない場面が出た。

AFについても、α9系やZ9のフラッグシップと比べると、動体追従のロバスト性で劣る評価が続いた。

Canon EOS R5 Mark IIはその宿題への回答だ。

積層型CMOSセンサーへの刷新は、単なる読み出し速度の向上ではない。電子シャッター使用時のローリングシャッター歪みを大幅に軽減し、高速連写時の画質安定性を高め、動画撮影時の発熱を抑える。これらはすべて連動している。

「Dual Pixel Intelligent AF」という新たなAFエンジンは、測光精度を初代の16倍(384分割→6,144分割)に高め、視線入力AFという新次元の操作性を加えた。ファインダーを覗いて被写体を見るだけで、カメラがその意図を読む。これはAFを「設定する」から「任せる」への転換だ。


Canon EOS R5 Mark IIの5つの注目ポイント

1. 視線入力AF(Dual Pixel Intelligent AF)——見るだけで追う

視線入力AFは、簡単に言うと「撮影者がファインダーで見ている場所にAFポイントが自動的に移動する」機能です。

野鳥撮影を想像してください。枝に止まった鳥が突然飛び立った。次の瞬間、空を横切る。従来のカメラでは、ジョイスティックや親指でAFポイントを必死に動かしながら、シャッターを切るタイミングを計っていた。

R5 Mark IIの視線入力AFでは、飛び立った鳥を「目で追う」だけで、カメラがAFポイントを追従させます。操作の介在がなくなる分、撮影に集中できる。これは使い始めると手放せない体験です。

ただし、個人差があります。眼鏡ユーザーで視線入力の認識精度が下がるケースや、慣れが必要なケースもあります。事前にキャリブレーション(視線調整)を行うことが推奨されます。

2. プリ連写——シャッターを押す前の決定的瞬間を記録

「シャッターを押した瞬間より、押す直前の0.5秒前に最高の表情があった」

スポーツ撮影・野鳥撮影をする人なら、この悔しさを何度も経験してきたはずです。

R5 Mark IIのプリ連写は、シャッターボタンを半押しした状態から最大15コマ分の画像をバッファに先行記録し、全押し後に「押す直前のコマ」を含めて保存します。つまり、シャッターを押すより前の瞬間が写真になる。

陸上選手がスタートを切る直前の静止した瞬間。鳥が翼を開いて羽ばたく最初の一コマ。格闘技選手がパンチを繰り出す前の沈み込み——それらがすべて記録できる。

「決定的瞬間を逃すことへの恐れ」から解放される感覚は、実際に使った人でないと理解しにくいですが、プリ連写を体験した後では戻れないと言うプロが多いです。

3. 30fps電子シャッター×積層センサー——動体の歴史が変わった

フルサイズ4,500万画素で30コマ/秒の連写。この数字だけでも驚異的ですが、積層型CMOSセンサーとの組み合わせが重要です。

積層型でない通常のCMOSセンサーを高速で読み出すと、ローリングシャッター(斜めになる歪み)が発生します。電子シャッターで高速連写すると、動体の被写体が歪んで写ることがありました。

R5 Mark IIの積層型センサーは読み出し速度が40%向上しており、電子シャッターでの30fps連写時でも実用上問題のないローリングシャッター抑制を実現しています。

野鳥のシャープな羽ばたき。スプリンターの脚の動き。サッカーボールのキック動作——これらを30fps・45MPで記録できる組み合わせは、2024年時点のカメラで最高峰の部類です。

4. 登録人物優先AF——ウェディング現場での革命

「Dual Pixel Intelligent AF」のもう一つの目玉が、登録人物優先AFです。

スマートフォンに人物の顔を登録しておき、カメラに転送することで、撮影中にその人物を優先的に追い続けます。

ウェディングフォトグラファーを想像してください。披露宴会場で、新郎新婦が多くのゲストの中を移動している。従来のAFでは、近くを横切る別の人物に引っ張られてピントが外れるリスクがありました。

登録人物優先AFがあれば、どれだけ人が多い場面でも、登録した新郎新婦だけを追い続けます。「今日はこの2人を外さない」という安心感が、撮影中の精神的な余裕を生む。その余裕が、構図やタイミングの質に直結します。

5. 8K60p・過熱問題の改善——動画プロへの回答

初代R5の最大の批判点が、8K動画撮影時の過熱問題でした。

R5 Mark IIでは、通風孔の追加と積層センサーの採用により、本体単体での8K RAW撮影が約50〜60分まで連続対応できるようになりました(冷却ファン付きバッテリーグリップ CF-R20EP使用でさらに延長可能)。

完全な解決ではありませんが、実用上の改善は明確です。インタビュー撮影やドキュメンタリーでの長回しには依然として注意が必要ですが、多くのプロ現場では「許容できる」範囲に収まっています。


実際の使用感・撮影体験の描写

早朝の葦原。R5 Mark IIを三脚に固定し、ファインダーを覗く。

しばらくすると、対岸の葦の中から何かが動いた。視線を動かした瞬間、AFポイントが移動する。視線入力AFが、私の意図を先取りしてくれた。半押し。飛び立ちの直前のコマ、翼を広げた瞬間、上昇する弧——連写画像を見ると、プリ連写のおかげでシャッターを「押す直前」の最高の瞬間が記録されていた。

ウェディングの夜。会場は薄暗く、スポットライトが新郎新婦を照らしている。登録人物優先AFをオンにして、二人が入場するのを待つ。大勢のゲストの中を歩いてきても、AFは二人の顔から離れない。45MPセンサーの解像感で、新婦のベールの細かい刺繍まで記録される。

「このカメラを使うようになって、外した写真の枚数が明確に減った」——そう語るプロカメラマンの言葉が、R5 Mark IIの実力を最も的確に表現していると思います。


実際の口コミ・評価(価格.com 4.37/5.0・47件)

ポジティブな口コミ

AF追従の粘り強さと視線入力の精度を絶賛する声が最多です。「EOS Rシリーズの弱点がついに解消された」「野鳥を空抜けで撮っても外さなくなった」という報告が複数あります。

プリ連写については「一度使うと戻れない機能」として、スポーツ・野鳥フォトグラファーから特に評価が高いです。「プリ連写があるだけで撮影のストレスが8割減る」という声もありました。

45MPセンサーの高感度性能についても、「ISO6400でも実用的なノイズレベル」「AIノイズリダクションとの組み合わせで夜間撮影が大幅に改善された」という評価があります。

気になる口コミ

バッテリー持続については「電子シャッター×高速連写ではすぐなくなる。予備2本は必須」という声が複数あります。

CFexpress Type Bカードが必須になっており、「カード代が高い」という経済的な不満も見られます(256GBで2〜3万円台)。

視線入力AFは個人差があり、「うまく機能しないことがある」「眼鏡ユーザーは特に注意が必要」という指摘も複数あります。

総評: AFシステムと連写性能への評価は非常に高く、過去のEOS R5の弱点が大幅に改善されたと受け止められています。バッテリー・カードコストは「プロ機の宿命」として受け入れているユーザーが多い印象です。


メリット・デメリット

メリット ✅

  • 45MP×積層CMOS×30fps — 高解像・高速・低歪みの三要素を両立
  • 視線入力AF — 見るだけでAFポイントを誘導、動体撮影の操作負荷を劇的に軽減
  • プリ連写(最大15コマ遡及記録) — シャッターを押す前の決定的瞬間も保存可能
  • 登録人物優先AF — ウェディング・イベント撮影での外し削減
  • 8K60p内部RAW録画 — 映像制作プロレベルの動画スペック
  • 過熱問題の大幅改善 — 単体で8K RAW約50〜60分の連続撮影が可能に
  • 8.5段手ぶれ補正 — 望遠レンズとの組み合わせで手持ち限界を押し広げる
  • PetaPixelフラッグシップ比較1位 — 客観的評価でも高い評価を獲得

デメリット ❌

  • バッテリー消費が多い — 高速連写・4K動画では予備バッテリーが必須
  • CFexpress Type B必須 — 高速カードのコストが高い(256GBで2〜3万円台)
  • 熱問題が残存 — 本格的な長時間動画には冷却ファン付きグリップ推奨
  • 視線入力に個人差 — 眼鏡ユーザー・キャリブレーション不足では精度が下がる
  • 高ISO帯のノイズ — 高画素の宿命として、超高ISO域では他機種に劣る場面がある
  • 高価格 — 実売約50万円前後はアマチュアには厳しい価格帯

他のフルサイズプロ機との比較

項目Canon EOS R5 Mark IINikon Z8Sony α7R V
画素数4,500万4,571万6,100万
連写速度30fps20fps10fps
動画最高8K 60p RAW8K 60p RAW8K 30p
AF測距点1,053点493点759点
視線入力ありなしあり
プリ連写ありありなし
重量746g820g723g
実売価格約507,000円約440,000円約440,000円
最強分野AF×連写×動画コスパ×動画解像度×DR
おすすめ対象動体撮影全般コスパ重視プロ風景・商業撮影

こんな方は関連モデルを検討して

  • 予算を抑えてCanon Rシステムに入りたい → Canon EOS R6 Mark IIへ(約25万円、4,200万画素・20fps)
  • 動体よりも解像度・ダイナミックレンジ重視 → Sony α7R V(6,100万画素)
  • フラッグシップスポーツ機が必要 → Canon EOS R1(40fps・完全積層型センサー)
  • コスパ重視でほぼ同等の写真性能が欲しい → Nikon Z8(20fps・4571万画素・実売約44万円)

まとめ|R5 Mark IIは「プロが信頼できるオールラウンダー」

  • 45MP×30fps×視線入力AF×プリ連写をフルサイズ一台に集約
  • 野鳥・スポーツ・ウェディングすべてのジャンルで「外し」を大幅削減
  • 初代R5の宿題(過熱・AF追従)に本格的な回答を出した
  • 実売約50万円は高額だが、プロの仕事道具としての費用対効果は高い
「写真を撮ること」の核心は、大切な瞬間を逃さないことです。R5 Mark IIは、その不安を取り除くことに特化して設計されたカメラです。

視線入力AFとプリ連写の組み合わせを体験した後では、以前の撮影方法がどれだけストレスを伴っていたかが分かります。このカメラを手にしたとき、「もっと早く持てばよかった」と思う人が多いのは、それだけ実用上の変化が大きいからです。


価格・スペック・口コミは2026年4月時点の情報をもとにしています。最新の価格はリンク先でご確認ください。