橋/近畿
旧香肌峡の吊り橋
老朽化した吊り橋で自殺の噂。
三重県松阪市飯高町を流れる宮川上流の渓谷「香肌峡(かはだきょう)」は、清流と奇岩が織りなす景勝地として知られるが、その渓谷に架かる廃吊り橋と宮川の水難事故が生み出した怨霊伝説でも知られる。
昭和中期の観光整備で架けられた吊り橋のうち、いくつかは老朽化によって閉鎖・放置され、錆びた鉄骨と腐った板材が今も谷底に向かって垂れ下がっている。
宮川は三重県最大の河川で水量が豊富なため、ダム建設・護岸工事など大規模土木工事の際に犠牲者が出た歴史がある。
また、観光客や地元住民の水難事故も多く、特に増水期の転落事故は毎年のように発生する。
廃吊り橋に近づいた者が突然バランスを失って橋から落ちそうになる体験や、水面を見ていると強く引き込まれる感覚を覚えるという証言は、地元住民の間では「川の霊に引かれた」として理解されている。
宮川上流の山奥では、ダム建設中に水没した集落の住民が移住した後も「水底から声が聞こえる」という証言が伝わっている。
【沿革・年表】
香肌峡の怪異は複数の要因が重なっている。
ダム建設による水没集落という「記憶の水底への沈降」、工事犠牲者の霊、観光客の水難、廃吊り橋という廃墟の恐怖。
それらが宮川という流水の上で重なることで、特有の怪談空間が形成されている。
- 江戸時代宮川沿いの香肌地区は林業で栄える。険しい渓谷を木材が流送された。
- 明治〜大正期宮川の護岸・橋梁整備が進む。洪水被害が記録される。
- 昭和20〜30年代宮川上流でダム建設計画が具体化。集落の水没移住が始まる。
- 昭和40年代香肌峡が観光地として整備。吊り橋・遊歩道が架設される。ダム建設工事が最盛期を迎え、犠牲者も出る。
- 1970年代宮川ダム群(蓮ダム等)が完成。水没した集落跡地が水底に沈む。
- 1980年代観光客の宮川水難事故が相次ぐ。吊り橋の老朽化で通行止めが増える。
- 1990年代廃吊り橋が複数生まれる。「香肌峡の廃橋は心霊スポット」という噂が広まる。
- 2000年代飯高町が松阪市に合併。観光整備の責任主体が変わり、廃橋の撤去が進まないままとなる。
- 現在廃吊り橋は一部撤去されたが、複数が今も廃墟状態で残存。宮川の水難事故は毎年数件のペースで発生。
【現象録】
- 廃吊り橋付近で突然バランスを失い、橋から落ちそうになる体験(複数報告)
- 宮川の水面を見ていると強烈な引き込まれる感覚を覚える
- 廃橋の上や川岸で白い人影が水面に向かって歩いているのを目撃
- 増水期に川岸に立っていると後ろから押される感覚がする
- ダム湖底から泡が出てくる場所で水中から人の声が聞こえるという漁師の証言
- 廃吊り橋を渡ろうとすると突然足が震えて動けなくなる体験談
- 川岸で写真を撮ると水面に人の顔が写り込む
- ダム上流の旧集落跡地付近で夜間に人の気配・灯りのようなものが目撃される
【体験・記録】(6件)
証言
渓流釣りで香肌峡を訪れた。
廃吊り橋が渡れるかを確認しようと橋に足を踏み入れた。
最初の数歩は問題なかったが、橋の中程まで来た時に突然足がすくんで前に進めなくなった。
怖いというより「足が言うことを聞かない」感じで、まるで誰かに足首を掴まれているような感覚。
後退しようとしたらすっと動けた。
その後で橋の下の水面を見ると、流れに逆らうように水中で何かが動いているように見えた。
魚ではなく、もっと大きいもの。
すぐにその場を離れた。
廃吊り橋が渡れるかを確認しようと橋に足を踏み入れた。
最初の数歩は問題なかったが、橋の中程まで来た時に突然足がすくんで前に進めなくなった。
怖いというより「足が言うことを聞かない」感じで、まるで誰かに足首を掴まれているような感覚。
後退しようとしたらすっと動けた。
その後で橋の下の水面を見ると、流れに逆らうように水中で何かが動いているように見えた。
魚ではなく、もっと大きいもの。
すぐにその場を離れた。
証言
友人と夏に香肌峡に遊びに来た。
川で涼んでいると、友人が突然川に引き込まれそうになった。
深みにはまったわけではなく、増水でもなく、ただ「引かれた」と言う。
私が腕を掴んで引き戻した。
友人の足首に赤い跡がついていたが、岩や流木で擦ったものではなく、まるで指で掴んだような跡の形をしていた。
地元の人に話すと、「香肌の川は飲み込もうとするから気をつけろ」と言われた。
ダム工事で亡くなった人が水の中にいると。
川で涼んでいると、友人が突然川に引き込まれそうになった。
深みにはまったわけではなく、増水でもなく、ただ「引かれた」と言う。
私が腕を掴んで引き戻した。
友人の足首に赤い跡がついていたが、岩や流木で擦ったものではなく、まるで指で掴んだような跡の形をしていた。
地元の人に話すと、「香肌の川は飲み込もうとするから気をつけろ」と言われた。
ダム工事で亡くなった人が水の中にいると。
証言
ダム建設前の水没集落から移住した老人の話を聞く機会があった。
老人は「あの集落はまだ水の中にある」と言った。
建物は壊したが、先祖の墓は移せた。
しかし「土地の記憶」は水底に残ったままだ。
毎年盆になると水底から先祖が帰ってくる感覚があり、ダム湖を見ると懐かしいのか怖いのかわからない気持ちになると。
「あそこは水没した者の場所だから、よそ者が近づくと引き込まれる」と言って、ダム湖への立ち入りを孫たちに禁じていた。
老人は「あの集落はまだ水の中にある」と言った。
建物は壊したが、先祖の墓は移せた。
しかし「土地の記憶」は水底に残ったままだ。
毎年盆になると水底から先祖が帰ってくる感覚があり、ダム湖を見ると懐かしいのか怖いのかわからない気持ちになると。
「あそこは水没した者の場所だから、よそ者が近づくと引き込まれる」と言って、ダム湖への立ち入りを孫たちに禁じていた。
証言
廃吊り橋の撮影に来た。
橋は一見まだ渡れそうに見えたが、板の一部が腐って穴が開いていた。
川の上から水面を撮影しようと橋に乗った瞬間、強烈な吐き気に見舞われた。
橋の揺れによる乗り物酔いではなく、橋に乗ったその瞬間からの吐き気。
川岸に戻ると治まった。
橋の上では5秒と立っていられなかった。
写真を確認すると、水面に撮影した写真のうち一枚に白いもやのようなものが水面すれすれに写っていた。
橋は一見まだ渡れそうに見えたが、板の一部が腐って穴が開いていた。
川の上から水面を撮影しようと橋に乗った瞬間、強烈な吐き気に見舞われた。
橋の揺れによる乗り物酔いではなく、橋に乗ったその瞬間からの吐き気。
川岸に戻ると治まった。
橋の上では5秒と立っていられなかった。
写真を確認すると、水面に撮影した写真のうち一枚に白いもやのようなものが水面すれすれに写っていた。
証言
地元松阪市の市史研究者。
宮川流域の水害・水難記録を調査した際、香肌峡周辺の水難事故が戦後だけで数十件記録されていることを知った。
うち観光目的での水難が多く、夏休みの子供の転落事故も複数含まれていた。
地域住民の間では「香肌の宮川は人を呼ぶ川」として知られており、美しい清流が逆に危険性の感知を鈍らせるという面もある。
怪談として語られる「水に引き込まれる感覚」は、水難事故者への追悼と警告が民俗的に変形したものと解釈できる。
宮川流域の水害・水難記録を調査した際、香肌峡周辺の水難事故が戦後だけで数十件記録されていることを知った。
うち観光目的での水難が多く、夏休みの子供の転落事故も複数含まれていた。
地域住民の間では「香肌の宮川は人を呼ぶ川」として知られており、美しい清流が逆に危険性の感知を鈍らせるという面もある。
怪談として語られる「水に引き込まれる感覚」は、水難事故者への追悼と警告が民俗的に変形したものと解釈できる。
証言
夜間に香肌峡を訪れ、廃橋近くから川を撮影した。
長時間露光で撮影した写真を確認すると、川の中程の岩の上に白い光の柱のようなものが写っていた。
時間は深夜2時頃。
付近に建物はなく、他に人もいない。
光源が何かわからず、同じ場所を複数回撮影したが、その一枚だけに写っていた。
また、撮影中に川の上流方向から「助けて」という声が聞こえた気がした。
確認に行こうとしたが、一人だったので怖くて動けなかった。
長時間露光で撮影した写真を確認すると、川の中程の岩の上に白い光の柱のようなものが写っていた。
時間は深夜2時頃。
付近に建物はなく、他に人もいない。
光源が何かわからず、同じ場所を複数回撮影したが、その一枚だけに写っていた。
また、撮影中に川の上流方向から「助けて」という声が聞こえた気がした。
確認に行こうとしたが、一人だったので怖くて動けなかった。
【所在・交通】
- 住所
- 三重県松阪市飯高町(香肌峡・宮川上流域)
- 交通
- 松阪市街から国道166号で約1時間。公共交通機関なし
【民俗・伝承】
日本各地に「川の神が人を引き込む」という民間信仰が存在するが、香肌峡の場合はダム建設による水没集落という歴史的事実がその信仰に具体的な根拠を与えている。
水没した集落の住民の魂が水底に留まり、訪れる人間を引き込もうとするという解釈は、日本の水辺の怪談の典型的な構造を持つ。
廃吊り橋という物理的な危険と霊的な危険が重なることで、怪談の説得力が増している。
関連地川の神の人喰い伝承、水没集落の記憶、ダム工事犠牲者霊
典拠松阪市史(飯高町誌)、宮川流域水害記録、三重県河川管理資料
【参考文献】
- 地方史松阪市史・飯高町誌
- 公式文書三重県河川管理局水難事故記録
- 一次資料「宮川ダム建設史」
- 観光資料三重県観光連盟資料
- 民俗資料飯高地区民俗調査報告書
- メディア怪談専門誌「幽」三重特集
⚠ WARNING
- 廃吊り橋への立入は非常に危険(倒壊・転落リスク)
- 宮川は増水時に極めて危険
- 夏季の渓流遊びは必ずライフジャケット着用
最終更新:2026-04-27